最近役所に問い合わせたり手続きしたりすることが立て続けに続いている。
僕は書類を作成したりするのは嫌いではない。むしろ好きなほうだ。それは受験と関係していると思う。
僕は小学4年生から塾に通い、中学、高校、大学、大学院、と入学試験を受けてきた。大学入試は2浪している。
受験とは事務処理能力の試験である。出題者の意図通りに書類を作る。出題者の枠組みで思考しなければいけない。枠組みから外れた発想はできない。受験では頭は良くならない。
役所の書類を書くのは単に穴埋めだけではない。申請のために文章を書くこともある。これも相手の意図通りの文章を書く必要がある。
受験や役所書類の作成は、出題者がいてその意図通りの答えを導き出す点においてパズルと似ている。ただパズルと言えば聞こえがいいが、しょせんは相手のゲームに乗せられているだけだ。
僕は受験では鍛えられた事務処理能力に関しては自信がある。自慢にはならない。でもそれが得意ゆえに、最近の役所書類の作成を楽しめているんだろう。
以上は役所に申請する側としての話である。一方で役所で働く人の思考パターンも分かってきた。
役所は前例主義で動く。「前そうだったから」が強い論理根拠となっている。前例が間違っているとは考えない。
またルールを守るのと同様に、ルールの間をくぐり抜ける手法にも長けている。トリッキーな状況であっても、いくらでも都合のいいロジックを編み出して何とか対処しようとする。ルールがおかしいとは考えない。
前例主義もルールへのアクロバティックな解釈も、本質的問題は解決していない。人を見ていない。目の前の状況を見ていない。
役所の人間は自分たちがバカバカしいゲームをしていることに気付いていない。
これは役所だけでなく、僕が以前勤めていた私立大学の事務職のような半分公的な組織でも同じだった。
イギリスに留学していたときのことを思い出す。僕は大学内にあるプールを利用するため、スポーツセンターに登録をしに行った。すると会員証は1年間分しか作れないという。僕は帰国のことを考えると半年しか利用しない。会員証を作ると半年分の料金が無駄になる。
するとスポーツセンターのおじさんは「半年分の料金でいいよ」と言って半分の料金で会員証を作ってくれた。ルール上は1年間の会員証しかないのに。
「半年しか使わない人は半年分で OK 」というルールがあったわけではないはず。目の前の状況を見て、自分の頭で考え、臨機応変に対応したのだ。これが意味のある仕事をするということだ。
日本的価値観からするとこのおじさんは「いい加減な人」「上司に相談せず勝手なことをする人」「職場のルールを守らない人」と呼ばれるだろう。でも僕は真に利用者にとって価値あることをするのは、イギリス人のこのおじさんの方だと思う。
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